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  3. 第15回「自然な形での死の過程を経ていくと、その人がエネルギー体になっているというか、肉体よりも違うところに入っているような、そんな感じがしてきます。」

第15回
名古屋ではずっと内科医だったそうですが、ターミナルケアと通常の内科医とでは、大きく変わることはありますか?
一番の大きな違いは受け止める人の数でしょうか? 外来では相対するのは患者さんと1対1です。再診も1対1です。ところが在宅のターミナルケアの場合には、言い方が適切ではないかもしれませんが、私はアウェイに出向く立場になります。そこにはご家庭があり、日々の生活があり、人生があります。私が担当するのは患者さん一人ではなく、その背後には奥様や子どもさん、お孫さん、ご親戚などがいらっしゃいます・・・。その中に入っていくことになるわけです。思いも、患者さんお一人の思いだけではなく、ご家族お一人お一人にそれぞれ違った思いがあり、それも受けとめる必要があります。

最初からそれは『しんどい』ということが分かっていました。でも在宅医療に関わり始めた頃は、家に帰ると私の身体が動かなくなるくらい疲れました。帰宅後、疲れた~と横になると、もう動けない。それくらいエネルギーを消耗していました。1対1の関係は真剣ではなかったということではなく、1対大勢は全く違いました。
その大勢も、意見が同じであればいいでしょうが、ご家族それぞれが違う意見のこともありますでしょうしね。
それは多いです。でも一番大切にしなければならないのは、患者さん本人がどうしたいのか。遺されるご家族が受けてしまうであろう思いをどれだけ軽くできるか。私たちがどれだけ不安を安心に変えることができるか。そこはとてもエネルギーが必要になります。

大きな病院を退院し在宅ケアに入っていくときに、その流れがうまく行ってない方もなかにはいらっしゃいます。在宅になったとき患者であるご本人が医療に対する希望がもてない・・と思っている場合、その中に入っていくのはとても大変です。目には見えないけれどもエネルギーはとても使っていると思います。
そういったとき、ご自身を保つ方法を何かお持ちなんですか?
試行錯誤でしょうか。そして、パートナーが見えない世界のことを分かってくれる人なので、私が本当にまずい状態になったときには山に連れ出してくれます。確実にタイミングよく。彼に引きずられながら山に行きます。
自然のなかで自分を取り戻していく、という感じでしょうか?
そうですね。自然界のエネルギーや周波数がいいのかもしれません。普段でも家に帰ってパートナーにその日にあった出来事を話しながら、自分でいろんなことを整理しているようです。次はこうしようと自分の中で練っているというか。時々パートナーがそれに耐えきれなくなっているようです(笑)。
パートナーがしっかり賀村さんを支えて下さっているんですね。ところで、賀村さんの毎日はどんなタイムスケジュールなんですか?
だいたい朝8時40分頃までにはクリニックに入り、前夜から入っている連絡やFAXに目を通して9時から外来が始まります(2014年3月時点)。基本的に午前中は外来で午後は往診。時には外来と外来の隙間をぬって、あるいはお昼休みに往診に行くこともあります。お昼を食べながら院長の話を聞いたり、様々な用事が入ることがあるので消化にはとても悪い食事ですよね。時にはお昼を食べる時間が取れなかったり、食事の時間が5分ということもあります。往診から戻ると会議があったり、訪問看護ステーションの看護師さんたちとカンファレンスがあったり・・・。
1週間夏休みを取って旅行、なんてことは出来るんですか?
休暇は取れないですね~。先日の金曜日、初めて有休を使って木~日の4日連続休暇を作り伊勢に行きました。『ここだけは休みを取らせて下さい』という感じで、現在は外来と訪問診療とが混在しながらの仕事をしています。
お疲れ様です。話をターミナルケアに戻しますが、ターミナルケアとは一言でいうとどんな医療なんでしょう? 在宅診療=ターミナルケアという感じですか?
在宅診療のなかには脳梗塞や脳出血で麻痺がある方、自宅で胃瘻をしている方、関節炎や脊椎の圧迫骨折で外来に来られない方、認知症が酷い方、老衰の方もいらっしゃいます。基本は『一人で外来受診が出来ない状態の方』が対象の患者さんです。ディサービスやディケア、通所リハビリ、訪問リハビリを活用しながら住み慣れたご自宅で機能回復に努めている方もいらっしゃいます。

ターミナルケアというのは末期の方への医療をいいます。延命のための治療よりも身体的苦痛や精神的なケアを行い、残された人生を充実させることを重視しています。また、ご本人さんだけではなくご家族含めてのケアが必要な医療だと思っています。
ここで診療報酬のことをお聞きするのは適切ではないかもしれませんが、お医者さんが患者さんと話をするのは、3分であろうと1時間であろうと診療報酬は一緒だと聞いたことがあります。しかし、ターミナルケアの場合にはじっくり患者さんやご家族の方々と話すことが重要になってきますよね。報酬が一定なら、患者さんと時間をかけて話をすればするほど報酬的には報われないことになってしまいますが、そこはどうクリアされているんですか?
診療時間加算といって訪問診療が1時間を超えた場合には加算されます。特別な勉強をした医療従事者が癌の方への精神的ケアを行った場合には加算される、ということもあります。ただ、ターミナルの、しかもかなり末期のご家庭に行くと30分、40分が平均。最初の頃は1時間はたっぷりかかります。訪問診療の予定を組み立てていても、途中ターミナルの患者さんが緊急で入ると、その後の方はなかなか予定通りには廻れなくなります。時間を超過してしまうことが多いので。
ターミナルケアに関わって良かったなと思われるときって、どんな時ですか?
ご家族の方が最後まで落ち着いて、ご自宅での看取りという大仕事をやり遂げた、人生の大先輩を無事に送り出せた。そういった達成感のようなものをご家族から感じたときには『あ~良かった』という気持ちになります。

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